温度と湿度実測結果

温度と湿度実測結果
温度と湿度実測結果

春日部の家 温熱測定 ~ 工学院大学建築学部西川研究室

測定概要
建物所在地 埼玉県春日部市
建物構造 木造2階建て
家族構成 母+夫婦+子供2人
委託研究先 工学院大学建築学部西川研究室
測定期間 2016年7月1日~2017年6月30日

日野の家 温熱測定 ~ 工学院大学建築学部西川研究室

測定概要
建物所在地 東京都日野市
建物構造 木造2階建て
家族構成 夫婦+子供1人
委託研究先 工学院大学建築学部西川研究室
測定期間 2019年4月8日~2020年9月30日(予定)

太陽光・太陽熱利用による木造戸建て住宅のエネルギー自立性評価に関する研究(その1)

評価建物概要と実測データ

Study on energy independence evaluation of wooden house using sunlight and solar heat (part1).
Evaluation building outline and actual measurement data.

日本建築学会発表論文

評価建物概要と実測データ
木造戸建て住宅 自然エネルギー利用換気システム
屋根集熱面 光ダクト 太陽光発電

正会員 持田 正憲1*
正会員 西川 豊宏2**
正会員 近藤 直輝3***
正会員 丸谷 博男4****
正会員 小泉 寿明5*****

MOCHIDA Masanori 1*
NISHIKAWA Toyohiro 2**
KONDO Naoki 3***
MARUYA Hiroo 4****
KOIZUMI Toshiaki 5*****

1.はじめに
近年、ZEHの開発や普及が進む中で、太陽光発電の発電量は季節変動により、年間を通してエネルギーコスト収支がマイナスになる時期があるなどの課題が明らかになってきている(※1)。また、設計時の試算値ではZEH が達成されているものの、実際の運用状況下ではZEHが達成されていない住宅が3割程度あることが報告されている(※2)ため、実居住下における計測データの知見をストック・活用していくことが重要であると考えられる。本研究では太陽光・太陽熱利用システムが導入された木造戸建て住宅(以降、評価建物と称す)を対象とした実測を行い、屋根集熱や躯体蓄熱等による外気負荷削減の評価と、実居住下での消費電力量と太陽光発電量のデータを用いてエネルギー自立性の評価を行う。本報では評価 建物概要と半年間の実測データについて報告する。

2.評価建物概要
2.1建物概要
表1に建物概要を示す。評価建物は東京都日野市に所在する木造二階建て住宅である。この戸建て住宅は、自然エネルギー利用換気システムによる太陽熱利用、光ダクト及び太陽光発電蓄電システムによる太陽光利用を行っている。

表1 建物概要
項目 概要
所在地 東京都日野市
建築概要 木造二階建て
敷地面積 約160㎡
建築面積 約54㎡
延床面積 約107㎡
1階床面積 約52㎡
2階床面積 約44㎡
ロフト階床面積 約12㎡
表2 制御条件
運転モード 屋根集熱面経由 屋根軒下経由
夏期 時間により取り込み方法を制御
23:00~5:00 5:00~23:00
冬期 屋根集熱面通過後の温度により取り込み方法を制御
25℃以上 24℃以下

2.2システム概要
2.2.1自然エネルギー利用換気システム
自然エネルギー利用換気システムは、南側屋根面における日射集熱・夜間放射冷却作用と躯体蓄熱を利用した換気システムである(※3)。図1にシステム系統図を示す。評価建物は表2の制御条件により、外気取り入れ経路の切り替え(屋根集熱面・屋根軒下)を行っている。夏期は夜間放射冷却作用が期待できる時間に屋根集熱(冷却)面経由で、その他は屋根軒下経由で外気を取り入れる。冬期は屋根集熱面内部の温度が25℃以上に上昇すると屋根集熱面経由で、24℃以下に降下すると屋根軒下経由で外気を取り入れる。冬期の切り替え温度の差は、中間温度の際に運転モードが頻繁に切り替わるのを避けるためである。取り入れた外気は、全熱交換器、1階床下を経由した後に1階の居室へ給気される。また、室内からの還気は、全熱交換器、2階床下空間を経由して2階の居室に給気される。

図1 システム系統図

2.2.2 光ダクト
図2 に光ダクト断面図及び内観を示す。評価建物は住宅密集地の大きな開口部を設けにくい立地にあるため、自然採光を確保する目的で光ダクトを導入しており、昼光利用による照明負荷削減効果が期待されている。内側が鏡面仕上げのダクトを通し、天窓から1 階の食堂に自然光を取り入れている。天窓の室内側にはリモコン操作で自動開閉可能なブラインドが設置されており、採光の量を 調整するとともに、夏期の日射熱の流入を抑制する。

図2 光ダクト断面図及び内観

2.2.3 太陽光発電・蓄電システム
表3 に機器概要(抜粋)を示す。南側屋根面には、公称最大出力4.5kW(250W×18 枚)、モジュール変換効率が18.3%の太陽電池モジュールが設置されており、発電した電力は建物内で蓄電・使用され、余剰分が電力系統に逆潮流(売電) している。パワーコンディショナの変換効率は96.0%で、モジュール変換効率と乗じて、発電効率は約17.6%となっている。蓄電池は、実効容量8.8kWh が設置されており、太陽光発電の一部を蓄電し、建物の電力需要に応じて放電し、電力供給の一部に対応している。また、蓄電量の不足分は主に夜間の電気料金が安い時間帯に充電を行っている。

表3 機器概要
太陽電池モジュール 公称最大出力 4.5kW(1 枚あたり250W)
変換効率 18.3%
パワーコンディショナ 定格出力 単相4.0kW
変換効率 96.0%
蓄電池 種類 リチウムイオン電池
実効容量 8.8kWh

2.3 計測概要
表4 に評価建物の計測概要を示す。データ計測は、外気、吹き出し口、全熱交換器に接続された各ダクト内部、床下、1階、2階、小屋裏において温湿度を計測している。一部系統の消費電力量は分電盤に電流計を設置し、照度は光ダクト下部に照度計を設置しており、いずれも10分間隔で自動計測している。また、吹き出し口からの風量 は、竣工時の試運転調整後と竣工の半年後に熱線風速計を用いて測定した。

表4 計測概要
計測期間 2019年4月8日~
計測項目 温湿度計測 外気、吹き出し口、居室、全熱交換器周辺ダクト内部
表面温度計測 基礎躯体、輻射冷暖房
消費電力量計測 全系統、クール暖、全熱交換器自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯機
照度計測 光ダクト下部
風量計測 吹き出し口、吸込み口
計測間隔 温湿度計測 10分間隔
表面温度計測 10分間隔
消費電力量計測 10分間隔
照度計測 10分間隔
風量計測 竣工時に計測(3月)、半年後(9月)

3.実測結果
図3 に室内外温湿度、図4に光ダクト経由の照度、図5に日別の太陽光発電量の推移を示す。評価期間において、外気温度は6.9~38.2℃、室内温度は20.2~30.7℃で推移しており、外気湿度は15~99%、室内湿度は31~78%で推移していた。光ダクト下部の照度は、晴天の場合に6000 ~10000Lx 程度であった。主に夏期においては、電動ブラインドが閉鎖されていることにより、最大でも1000Lx 程度の照度であった。光ダクトを経由して室内に入射する光は、直達光及び反射光であるため、1日周期において照度が著しく変化するが、ブラインドを閉鎖することによ って、入射光は平準化されていた。太陽光発電量は、晴天日において3.0kWh 程度であった。

図3 室内外温湿度

図4 光ダクト経由の照度

図5 時刻別太陽光発電量

参考文献
(※1) ZEH普及促進に向けた政策動向と令和2年度の関連予算案
(※2) ZEH支援事業調査発表会2018
(※3) 渡邉拓海, 西川豊宏 他:木造戸建住宅における自然エネルギー利用換気システムの外気負荷削減効果と太陽光発電によるエネルギー自立性予測,太陽/風力エネルギー講演論文集(2018), pp.275-278, 2018.11.8-9

*1 MOCHIDA 建築設備設計事務所
*2 工学院大学 建築学部 まちづくり学科 教授 博士(工学)
*3 戸田建設株式会社(当時工学院大学学部生)
*4 一級建築士事務所 株式会社エーアンドエーセントラル
*5 工学院大学大学院 修士課程

*1 MOCHIDA Building Engineering
*2 Prof., School of Architecture, Kogakuin Univ., Dr. Eng.
*3 TODA CORPORATION
*4 President of Arts and Architecture
*5 Graduate Student, Kogakuin Univ.