障子に映し出される光と影は、人の心を癒し、気分を和らげ、季節の移ろいを感じさせてくれる。 | |
トップライトの光は、窓の3倍明るい。 | |
反射率95%の光ダクトで1階まで光を導き、住宅密集地でも太陽を感じながら快適に暮らす。 |
窓や縁側の間仕切りとして用いられる障子は、「障(さえぎる)」「子(もの)」という名の通り、もともとは襖や戸、ついたてなど建具の総称でした。現代のような障子になったのは平安時代後期といわれ、和紙の生産が増加した室町時代以後に多く用いられるようになりました。木の格子組に張った和紙を通して外からの日差しをほどよく抑え、やわらかな光を室内に取り入れます。
障子に映し出される光は四方に拡散され、どの方向から見ても均一で美しい明るい光となり、清々しく温かく明るい光となって空間全体を包み込みます。そのやさしい光と影からは季節の移ろいを感じます。人の心を癒し、気分を和らげます。機能性や光の美しさ、癒し効果などが改めて評価され、和の空間だけでなく、洋の空間や癒しが求められる病院などにも利用されるようになってきている。
宮城野山荘 神奈川県箱根町 設計:丸谷博男 トップライトは、吹抜け上部の北側屋根面に設置されている。柔らかい光が、家全体に入ってくる。
三重県いなべ市の個人邸 設計施工:有限会社トヤオ工務店
階段の上部にトップライトが設置されている。この階段は家のほぼ中心に位置しているため、家全体が明るい。トップライトの光は、壁付けの窓の3倍もの明るさが見込まれる。取り入れた光を上手に活用している施工例。
旧山田家(町医者)住宅 岐阜県美濃市
1階診察室の上部の屋根面にトップライトが設けられている。患者さんの顔色を診るのに、自然光が適しているという配慮から、トップライトが設置され、屋根面から取り入れた光を、1階の診察室まで誘導している。現代建築においても最先端の診察室の構造といえる、画期的な発想だろう。この考え方は現代の病院でも積極的に採用してほしい。
少しでも多くの光を1階まで誘導しようと、光道ダクトの形状が末広がり状になっている。しかし、誘導距離が長く、側面素材が光の反射率の低い杉板張りになっているため、光の減衰が大きい。実際に体験すると解かるのですが、1階には、思ったほど光が入ってきていないのが実情。光を光道ダクトで誘導する場合は、誘導距離が長くなると光の反射の回数が多くなるため、光の減衰が大きくなり、一定距離を過ぎると光が届かなくなるのです。
トップライトFIXタイプ
採光だけを目的とした、開閉しないシンプルな構造になっている。
トップライト電動開閉タイプ
採光に加えて、開閉できる。手元のリモコンスイッチで操作する。上昇気流により、トップライトから空気が換気され、室内に心地よい風が流れる。
ロールスクリーン
トップライトに、オプションでセットできる。透過生地により、光の量を調整しながら使用する。
遮光ロールスクリーン
遮光タイプのスクリーンも選択できる。寝室のトップライトなどに使うとよい。
光ダクトとは、建築物の窓やトップライトから取り込んだ自然光を「光ダクト」により高効率に伝送することで、窓の無い部屋や自然光の入りにくい部屋へ光を届けることができる自然採光システムです。
四方を建物に囲まれた旗竿地では、当然のことながら日照条件が悪くなります。都市部の住宅地では、このような旗竿地は珍しくありません。このような日照条件が悪い環境では、外壁面に窓を設置しても、充分な採光を得ることは難しいので、光ダクトを採用し、光を効率的に室内に運びます。
東京都日野市の2階建ての個人邸の敷地は、まさに四方を建物に囲まれた旗竿地です。日照条件が悪いため光ダクトの採用となりました。家の中心部分の屋根面に、トップライトを設置して、光の誘導ダクトを設け、光を1階まで導いています。光ダクト内の鏡面材は、反射率が95%以上と高いので、光の減衰は限りなく低く抑えられ、光は1階の居間まで効率的に運ばれてきます。
朝から、夕方まで、太陽の動きと共に、家の中を陽の光が移ろいます。自然光なので、植物が育ちます。曇りや雨が降っている日でも、思った以上に明るいので、日中は照明を付けることなく暮らせます。
垂直型光ダクト
反射率95%以上の鏡面材をダクト状に加工し設置し、トップライトの採光を1階の部屋まで誘導する。
垂直型光ダクト(直貼りタイプ)
光を誘導するダクトの壁下地を仕上げ、反射率95%以上の鏡面材を壁下地に直接接着固定する。
水平型光ダクト(薄型横引きタイプ)
屋根面にトップライトが設置できない場合には、光ダクトを横引きに加工して設置し、1階の窓から採光する。この場合は隣地に空地が必要。
光を取り込む採光部
屋外の光を家の中に取り込む部分が「採光部」です。特殊な構造ではなく、一般的な屋根につけるトップライトや、壁につける窓を利用します。
光を導く光ダクト
「採光部」と「放光部」をつなぎ、光を導く役割の特殊な部材が「光ダクト」です。通常は天井裏や壁で仕切られていて本体は見えないようになっています。
光ダクトの内部
光ダクトの内部は、光の反射率が95%以上の高反射鏡面材でできている。
光を取り出す放光部
取り込まれた光を室内に放出する部分が「放光部」です。壁や天井につくり、お部屋の内装やデザイン、光の感じ方によって、部材も変えます。