基礎と構造

基礎
基礎と構造

床と基礎


床下空間は室内の一部と考え、基礎断熱方式を採用する。
京都の町家や古民家の「石場立て」工法から学び、通し柱は柱脚金物で基礎に直接設置し固定する。
地盤改良には、杭やセメントを使わず、天然砕石を使う。

床下空間は室内の一部と考え、基礎断熱方式を採用する。

基礎の立ち上がり部分と外周床部分に、断熱材が施工されている。断熱材のつなぎ目に、ウレタンが吹き付け充填されている。
木製床吹出し口。
子供が素足で歩いても安全。

京都の町家や古民家の「石場立て」工法から学び、通し柱は柱脚金物で基礎に直接設置し固定する。

古民家の柱は、基礎の石の上に直接立っている

木の住まいをつくる工法には1300年以上の歴史を持つ「伝統工法」があります。一言で伝統工法といっても実際には、民家の工法、書院建築の工法、寺院の工法など多様です。五重塔も全国にたくさんありますが、地震に遭遇しながらも壊れたものはありません。そこにはすばらしい知恵が豊富に隠されています。この伝統工法で住宅をつくることは大賛成です。日本の誇る技術ですので継承したいと願っています。

伝統工法から学ぶ工法として「石場立て」工法があります。「石場立て」工法とは、柱は基礎石の上に直接乗せる工法です。柱の底面を石の形に合わせて加工して乗せます。京都の町家や古民家は、伝統的に「石場立て」工法です。

「石場立て」工法は、加工の手間が掛かり、コストが増大します。このため、通柱だけは土台に乗せず、柱を柱脚金物で土台に直接基礎に設置し固定する方法を採用します。

通柱だけは土台に乗せず、柱をウッドテック柱脚金物を使って、直接基礎に設置し固定。
奈良東大寺正倉院宝物殿 奈良県奈良市雑司町

業界No.1の強度 ウッドテック金物

コンピューター技術の高度化により、手加工ではなくコンピューター制御の機械加工による軸組工法があります。いわゆるプレカット工法です。接合部には金物を使います。この金物にも多様な試みがされ、さまざまな金物工法が普及しています。鋼板ではなく鋳物の丈夫な金物を採用しています。これによって塩害にも耐えられる頑丈な工法が実現しました。

ウッドテック金物は、業界No.1の強度(2011年金物メーカー8社をの金物を集めた接合部強度試験)と1600ガルの振動にも耐える耐震性、また施工も安全で確実、スピーディに行える工法です。

ウッドテック金物
静岡県浜松市浜北区永島 個人邸・居間吹抜け

一般木造住宅では、床下断熱方式が主流。床下は外部として扱っている(問題が多い)。

現代の一般的な木造住宅では、土台を木を横向きに設置し柱をその土台の上に乗せています。木の弱い方向での使い方になっています。このため、上部の荷重によってもめり込むことがあります。耐震性を高めることで、筋交いも土台にめり込んでいきます。三階建てになれば、さらにその危険性は大きくなるのです。

湿度が85%を超えると、カビは数日で発生します。
カビのいちばんやっかいなのは、人の健康を害すること。代表的なのは、シックハウス症候群とよばれ、カビが飛散させた胞子を吸い込むことにより、個人差は大きいですが、目の痛み・不快感、鼻水、喉への炎症、吐き気、湿疹、頭痛、だるさ、呼吸困難など、アレルギーになるほか、場合により重篤な症状を人体に及ぼします。カビは普段目にしない床下や壁の中で増殖を続けるため、屋内にいるとなんとなく体調がすぐれないなど、原因として特定しづらいことがあります。

床下の土台でカビが発生している。カビは普段目にしない床下や壁の中で増殖を続ける。画像は、日本ボレイトのホームページから引用。

人体に安全な「ホウ酸塩」による防腐防蟻工法

木造建築の大敵は、腐朽菌による木材の腐れ、あるいはシロアリによる蟻害です。これを生物劣化といいます。生物劣化は、耐震性と住宅の資産価値を大きく低下させます。腐朽菌によって木材の質量が10%減少すると、強度は40%低下するといわれています。
沖縄では、家のまわりに琉球松の杭を埋め、これを餌にしてシロアリの被害から家を守っていました。都市部ではこのようなことは不可能です。基礎や土台、柱の下部に防蟻剤を塗布するのが一般的です。蟻害や腐れに強いといわれているヒノキやヒバを使用することもありますが、性能が十分とはいえません。しっかり対策するには薬剤処理が必要となります。

左側がアメリカカンザイシロアリ、右がヤマトシロアリ。画像は、日本ボレイトのホームページから引用。

防腐防蟻処理剤として、人体に影響のもっとも少ない「ホウ酸塩」による処置を推奨しています。欧米では優れた安全性と持続性から「ホウ酸塩」が広く使われています。「ホウ酸塩」はアメリカのカリフォルニア州などで採掘・精製される無機物の鉱物です。揮発しないため空気を汚すことがなく、効果が長期持続するのが特徴です。
植物にとってもホウ素は必須微量栄養素です。人は野菜を食べたり、水を飲んだりすることで、ホウ素を摂取しています。哨乳動物が過剰にホウ酸塩を摂取すると腎臓でろ過され、体外へ排出されます。このためホウ酸塩の急性経口毒性はとても低く、食塩程度です。
一方、シロアリなど腎臓のない下等生物などが摂取した場合、代謝がストップし、餓死します。ホウ酸やホウ砂が洗眼用として薬局に置かれているのは、「細菌に効いて人に優しい」という作用を利用したものです。

床に使用する構造用合板に、ホウ酸を塗布しているところ。土台と柱には、既にホウ酸の塗布が完了している。

一般的に住宅の木部に使用されている農薬系の防腐防蟻剤の効果は短く、5年前後で効果がなくなってしまいます。「そらどまの家」のように、床下に蓄熱コンクリートを装備し、24時間換気の循環換気型の省エネ住宅では、農薬系薬剤を使用すると揮発成分が居住空間へ流れ、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こす一因となり、注意が必要です。
その点、ホウ酸塩は揮発・分解することがありません。そのため空気を汚さず、予防効果が長期に渡り持続します。しかし、どのような防蟻剤を使用しても定期的な点検は重要です。床下点検がしやすいよう床高や必要な点検口を配置し、木材や基礎のヒビ割れなどをチェックをしましょう。
基礎断熱方式を採用しているため、床下空間は、24時間換気の空気の通り道にもなっていることから通風があり、湿気が少ないので、シロアリや腐朽菌の繁殖しにくい環境をつくることができています。

地盤改良には、杭やセメントを使わず、天然砕石を使う。

奈良の法隆寺金堂と五重塔

安全な家づくりは建築工事の前に地盤づくりをします。1300年前に法隆寺がつくられたときに中国から3人の博士が来ました。建築設計の博士(大工)、瓦づくりの博士(瓦職人)、そして地盤づくりの博士(基礎工事)でした。つまり昔から、地盤の重要性が認識されていました。法隆寺は金堂、五重塔といまだにピサの斜塔のように傾くことはありません。

住宅の土地を探す時には、地盤がいい場所を選ぶことは、とても重要です。しかし、既に土地を持っていて、その土地に家を建てようとした時に、地盤が悪いと、地盤改良が必要が必要になります。地盤改良には、一般的に高額な費用が掛かります。また、コンクリートなどで地盤を固めた時に、コンクリートと地盤の土が反応して、有害物質・六価クロムを発生させてしまうことがあります。発生メカニズムはいまだ解明されていないのが実情で、十分に注意する必要があります。

さて、地盤改良には、表層改良、柱状改良、鋼管やコンクリートパイルによる既製杭工法などがありますが、安全な地盤づくりを考えたときに
①安全な材料を用いること
②長寿命であること
③地震に強いこと
などの条件があり、そこで考えられた工法が天然砕石を材料にした地盤改良「HySPEED(ハイスピード)工法」です。接着剤や固化材を使っていませんので、土壌汚染や産業廃棄物とならず、安心して使用できます。万が一、土地を売買するときにも、この杭は除去する必要もありません。この工法を薦めています。
また、砕石パイル形成時の転圧作業により水平方向にも圧密がかかるため、軟弱な地盤の中でも摩擦抵抗の高い丈夫な砕石パイルが形成されます。
また、さらに強い底部圧密で砕石パイルを支えます。

掘削工程

ドリルによる掘削を行います。

砕石パイル形成工程

砕石を投入し、ピストンバルブによる側壁圧密と底部圧密を掛けながら地上まで砕石パイルを形成していきます。この時、砕石は約50センチ単位で強度を確認しながら締め固めるので、施工に狂いがありません。


砕石を投入しているところ。

砕石パイル完成イメージ図

土粒子や砂粒子が緩く積もった地盤で、粒子同士がお互いにくっついて骨格を作っている地盤は、支持力が弱い地盤です。地震の揺れにより液状化が発生する恐れがあります。

軟弱な地盤の場合

軟弱な地盤の中でも、砕パイル形成時の転圧作業で水平方向にも圧密が掛かるので、摩擦抵抗の高い丈夫な砕石パイルが造られ、さらに強い底部圧密で砕石パイルを支えます。

液状化に有効

液状化に有効な工法 最近話題になっている「液状化」に対しても浮き上がることはありません。セメント柱状杭や鋼管杭では、液状化が起こると一気に水が地表に噴き出し、地盤沈下を起こす可能性があります。HySPEED工法では、液状化による水圧を逃がします。砕石パイルの支持力と砕石パイルの周辺の締め固め効果により不同沈下を防ぐのです。間隙水圧を消散しながら、砕石パイルとその周辺の圧密効果により液状化を抑制します。HySPEED工法は、大地と一体化している杭工法なのです(図8)。

地震に有効

十勝沖地震(震度6.4)や阪神淡路大震災(震度7)、東日本大震災(震度7、マグニチュード9)などにより大きな被害が発生しましたが、砕石を使った地盤補強では液状化による大きな被害はなく、HySPEED工法の効果が実証されました。地震時には、建物の揺れと地盤の揺れに違いが生じ、その変化に杭が耐えられないことがあります。セメント柱状杭・鋼管杭ではヒビが入る可能性がありますが、砕石パイルの場合には、もともと砕石を固定しているわけではないので、さまざまな揺れや力に緩やかに追随することができます。

HySPEED工法
液状化による水圧を逃がすので地盤沈下しない。


セメント柱状杭・鋼管杭
砂の層に含まれる水が液状化し地盤沈下する。

HySPEED工法
砕石パイルが地盤の揺れに追随していく。


セメント柱状杭・鋼管杭
杭にヒビが入る可能性がある。