エアコンの冷暖房は、欧米の気候には向いているが、残念ながら日本の気候には向いていなかった。 | |
夏は高温多湿・冬は低温乾燥という日本の気候には、輻射式の冷暖房が理想的。 | |
風が出なく、音がしない輻射式冷暖房は、室内の壁・床・天井をほぼ一定の温度に保つ能力がある。 |
クリモグラフをご存じですか。
小学校か中学校で作ったことがあるのではないでしょうか。世界の都市の温度と湿度を月別平均してグラフ化したものです。縦軸に湿度、横軸に温度として、12か月分を折れ線で表示しています。
高温低湿、低温多湿の北欧では、夏、冷房しても湿度が少し上がるくらいで快適域にあります。冬、暖房しても多湿なので湿度が下がり快適域になります。
ところが、日本では、夏冷房すると、もともと高い湿度がさらに高くなってしまい湿気感が伴います。また、冬はもともと乾燥しているため、高乾燥となり、鼻や喉の粘膜が乾き、肺に直接、風邪のウィルスが入りやすくなり、インフルエンザの流行を生み出してしまいます。
このグラフを、地域別に分けてみると、日本とヨーロッパとアメリカとの違いがよく分かります。
ヨーロッパとアメリカは左肩上がりです。夏に温度が高くなっても湿度が低く、冬は温度が低く湿度が高くなっています。ベルリンの8月は温度24℃・湿度62%です。サンフランシスコの8月は温度17℃・湿度67%。
ところが、日本の都市は右肩上がりです。日本の夏は温度が高く湿度も高くいわゆる高温多湿です。冬は温度が低く湿度も低くなっています。とくに、太平洋岸にある東京が、夏と冬の温湿度の差が大きいことが分かります。東京の8月は温度27℃・湿度77%です。
つまり、クリモグラフが右肩上がりの地域では、
「空気で暖冷房することは健康な環境になりません」
「空気を遣わずに幅射で暖冷房することが健康な温湿度環境を実現する」
ということになるのです。単純なグラフですが、理解できることは深いです。
幅射暖冷房は、空気を冷やしたり暖かくすることなしに、身体を冷やしたり温めたりします。それは目に見えない遠赤外線による効果なのです。
遠赤外線とは電磁波です。
太陽光のように物体との相互作用の結果、熱が発生する現象なのです。到達した電磁波が、皮膚や皮下脂肪・水分に熱を発生させるのです。これはエアコンのような対流や伝導による暖冷房では不可能です。遠赤外線は電磁波です。その速度は30万km/秒。秒速地球7回り半です。この速度で、室内を駆け巡り、部屋の隅から隅まで等温空間にしてしまうのです。扉や壁で遮られた部屋を暖冷房することも可能なのです。そこが、エアコンと一番異なるところです。
夏は15~20℃の水で冷房、冬は30~40℃の水で暖房が可能。穏やかな温度、自然な涼しさあたたかさが実現できる。天井が高い大空間でも効率的に冷暖房を実現します。風と音のない静寂の環境。熱源は、地下水/空冷ヒートポンプ/水冷ヒートポンプ/地熱源ヒートポンプ/太陽熱温水器/ガスボイラー/廃熱回収機器などが考えられます。
幅射暖冷房はエアコンとは違い、直接、温風や冷風を出さないため、ハウスダストやダニ、カビなどの微細媒塵を空気中に巻き上げたりすることはありません。さらに音もなく、臭いも出さない。暖冷房器のイメージを根本から変えています。
暖冷房の必要な地域では、熱源は現在のところもっとも効率的なヒートポンプを使います。空気熱源式ヒートポンプがもちろん普及していて使いやすいのですが、地熱や井水でも条件によっては選択することができます。
「エアコン」は、断熱性の高い空気に無理矢理に熱を伝え、その空気を人体に送り届け、さらに熱を無理矢理に伝えるという仕組みになっています。かなり力任せの仕組みなのです。それだけ無駄なエネルギーを使っているのです。
幅射暖冷房は、空気を動かす必要がなく、その空気にはもっともふさわしい断熱材としての役割をしてもらっているのです。保温保冷の役割が空気にはふさわしいのです。そして、適度な換気により人体の発汗作用に必要なだけの気流をコントロールしています。
室内の幅射熱発生体は、これまでは鉄に代表される金属ラジエーターでしたが、最近は金属よりも放射率が高く、腐食にも強いという特徴があるため、ポリプロピレン製のラジエーターに注目し利用しています。
暮らしの場に最適な選択と組み合わせをしていくことが大切です。つまるところ適材適所ですね。
世界ではじめてポリプロピレンを幅射パネルに採用プラスティックの住宅用冷暖房パネルは世界初。金属パネルのような腐食がなく、湿気に強い。そのため高品質を長く保ちます。さらに超軽量で高熱耐久性、放熱性に優れ、リサイクル可能な素材のため地球環境にも優しい素材です。
子供が触っても火傷しないパイプ温度「クール暖」は放射率が良いため、金属パネルに比べて低い温度での暖房が可能。そのため表面温度が低く子供やお年寄りへの心配もありません。また、衝突によるけがの心配もありません。
これまでまがい物にされてきたプラスチック。ようやく他の材料に勝る発見ができました。「エアコン」に代わる暖冷房機として今後が期待されます。
サウナ(空気のお風呂)では80~100℃でも、しばらくしないと温まりませんが、お湯のお風呂では45℃でも熱いくらいで、あっという間に体が温まります。
これは物質によって熱容量・比熱が異なるからです。そして、幅射はさらに革命的で、物体から物体への伝導ではなく、遠赤外線という電磁波によって、直接的に人体に熱を発生させる現象なのです。この電磁波は、秒速30万kmという驚くような早さなので、部屋の中を吸収と反射により満遍なく温めることができるのです。
その結果、空気温度を不必要に上げることなく、人体や建材を直接温めるため、冬は相対湿度も下がらず乾燥させません。温度差のない空間ができる理由はここにあるのです。
体感温度は、空気温度+周囲の幅射温度を2で割った値ですので、暖房時にまったくゾクゾク感がないのです。これが幅射暖房でリラックスできる理由です。
熱が伝わる方法は、小学校の理科で習いましたが、伝導・対流・幅射の三態があります。三態の内、幅射の割合が大きいことに驚きます。これについては、様々なデーターがありますが、上向き、下向き、横向きなどその方向によっても多少の違いがあります。また、その物体の放射率(吸収率)によっても異なります。
以下のイラストは、理想黒体の場合の割合とご理解ください。アバウトですが、幅射を小さく見て、対流・伝導の熱伝達が50%、幅射の熱移動が50%と理解すると覚えやすいでしょう。
理想黒体の場合の割合は、伝導10%・対流15%・輻射75%
太陽から輻射熱が送られてくる。家が温められて壁を熱が伝導する。風によって空気が対流する。宇宙空間は真空なので、熱の対流と伝導はありません。太陽から発生する輻射熱は、宇宙の真空空間を伝わってくるのです。
熱伝導(伝導)とは、熱が物質よって運ばれる現象のこと。原子・分子の格子振動の伝播や自由電子の移動によって、熱が運ばれていきます。
対流(たいりゅう)とは、熱が、温度差によって生じた流体(液体や気体)の移動によって、運ばれる現象のこと。
熱輻射(輻射)とは、熱が放射線(電磁波)によって運ばれる現象のこと。熱放射(放射)ともいいます。
宇宙空間では、空気はほとんどなく、気圧も0に近く、温度差が200度以上もあります。また、地上よりたくさんの放射線や、ものすごい速さのチリなどが飛びかっています。宇宙服の重さは、全部で約120キログラム。宇宙服の中は、純酸素で満たされ、約3分の1気圧に保たれています。
気密と断熱と冷却のために14層で構成され、7~13層は、薄いアルミ7層で構成されています。宇宙は真空なので、熱の伝導と対流は発生しないため、輻射熱だけを遮断すればよいのです。そのための遮熱材としてアルミが使われています。宇宙飛行士がどんな活動をするかで違いますが、約9時間ほど続けて船外活動ができます。
材料名 | 熱伝導率 | 容積比熱 | 比熱容量 | 放射率(吸収率) | 熱拡散率 | ||
W/mK | KJ/㎥K | J/gK | 1μm | 3~5μm | 8~14μm | m㎡/s | |
水 | 0.6 | 4,187 | 4,186 | 0.93 | 14 | ||
水蒸気 | 1,850 | ||||||
空気(乾燥) | 0.02 | 1.3 | 1,005 | ||||
空気(湿度100%) | 1,030 | ||||||
木 | 0.12 | 519 | - | 0.9~0.95 | 0.9~0.95 | ||
土壁 | 0.69 | 1,072 | - | 0.9~0.98 | 0.9~0.95 | 1.8(中間湿度) | |
高性能グラスウール16kg/m3 | 0.038 | 13.4 | - | 44(ミネラル系) | |||
硬質ウレタンフォーム | 0.025 | 520 | - | 30 | |||
板ガラス | 1 | - | - | 0.98 | 0.85 | 43 | |
鉄 | 53 | 858 | 0.35 | 0.18 | 0.10 | 13.9 | |
鉄(酸化面) | 0.85 | 0.85 | 0.80 | 13.9 | |||
アルミ | 209.5 | 2,374 | 0.13 | 0.05 | 0.025 | ||
アルミ(酸化面) | 0.40 | 0.30 | 0.35 | 897 | |||
レンガ赤 | 0.61 | 1,381 | 0.8 | 0.93 | 0.9 | ||
コンクリート | 1.3/1.62 | 1,909/1,910 | 0.65 | 0.9 | 0.9 | 66 | |
セラミック | 0.4 | 0.95 | 0.9 | ||||
ポリプロピレン | 0.12 | 0.95 | 0.95 | ||||
アスファルト | 0.95 | 0.95 | |||||
石膏 | 0.40.97 | 0.8~0.95 | |||||
塗料(アルミ除く) | 0.9~0.95 | ||||||
紙(色問わず) | 0.95 | 0.95 | |||||
布 | 0.95 | 0.95 |
※測定結果については測定条件により動くようです。0.05前後程度の動きがあるものとご理解ください。
遠赤外線加熱の注意事項 | 解説 | |
1 | 電磁波による熱の移動は放射と吸収の差 | 熱移動は、絶対零度(-273.15℃)以上の全ての物質間で、温度の高い方から低い方へ向けて起こる。 同じ温度の物質間でも放射エネルギーの分布(分光放射率)により、ある波長域で一方の放射が強ければ、エネルギーの移動は起こり得ると言える。 |
2 | 放射率 | ある物体からの放射熱と、同じ温度にある黒体(理想物体で放射率は1)放射との比。放射率=吸収率。遠赤外線放射材料は遠赤外領域の高い放射率が必要である。材料の種類だけでなく密度、形状、表面状態(鏡面,粗雑)、水分などにより大きく変化する。 |
3 | 遠赤外線放射材料 | 絶対零度以上の物体であれば、岩石、木材、紙、金属、プラスチックなどあらゆる物質から赤外線は放射されている。しかし、遠赤外線の利用目的が「加熱」や「乾燥」の場合には、放射材料を高温にして大きな(必要な)放射エネルギーを放出させるため、耐熱衝撃性の高いセラミックスや、セラミックコーティングを施した金属が用いられる。これらのセラミックス材料は、成分や形状、表面状態により遠赤外線波長域での放射率を高めた物質である。 |
4 | 遠赤外線の選択吸収性 | 物体を均一に加熱するとき、遠赤外線の「陰」を作らない工夫が必要。また、表面部分のみを加熱する(表面部分で赤外線がほとんど吸収される場合)することもあり、加熱物の形状により加熱方向や必要電カの設定に注意が必要である。 |
5 | 遠赤外線は陰をつくる | 水の場合、水の厚さが1~10μmでは遠赤外線吸収の選択性があると言える(注記:水の厚さが1~10μmでは選択性があると言えるが、1mm以上の厚さの水膜は、3μm以上の遠赤外線をほぼ100%吸収する、と報告されている)。水は、波長3μmおよび、6μmの遠赤外線を吸収する(吸収選択性)と言われている。水分子の基準振動数を波長に換算すると、2.66、2.73、6.27μmとなることによる。しかし、単分子状(水蒸気)での話であり、通常の水には適用されない。 |
6 | 遠赤外線と近赤外線 | この使い分けは、赤外線を何に使うか?による。例えば、印刷物のインクの乾燥や紙の乾燥に赤外線が用いられることがある。加熱効果では遠赤外線に分があるが、インクや紙の乾燥には近赤外(0.7~3.5μm)が優るという報告が多い。塗装の焼き付けや乾燥では波長0.7~5μmの近赤遠赤外線が使われている。このように用途によっては使い分ける場合もある。発熱体は、遠赤外線のみあるいは近赤外線のみを放射するわけではない。放射する波長のピークや分布の仕方で発熱体の性能(赤外線放射の性能)が決まる。発熱体の種類を選択するには、加熱乾燥などの目的と対象物の赤外線吸収率を把握し、どのように加熱するか、最適な赤外線加熱を検討しなければならない。 |
7 | ヒーターの予熱 | セラミックヒーターの場合、通電後使用温度に到達するまでに10分~15分程度の予熱(待ち時間)が必要である。タイムラグを許容できない場合は、放射波長のピークが近赤外線の範囲にある点に留意して、ハロゲンランプや石英管ヒーターを利用する。 |
遠赤外線の発見
1950~70年代、NASA(航空宇宙局)において「宇宙船内における人間の生存条件」の研究が行われました。真空、無重力、極低温という過酷な条件の宇宙船内で人が生存するために必要なファクターを調べたものです。この研究において太陽光のうち波長8~15マイクロメーター(μm)の赤外線が生物の生存に欠かせないことがわかりました。その結果、それまで赤外線と総称されていた電磁波は近赤外線と遠赤外線の2つに区分されるようになりました。
遠赤外線は電磁波
遠赤外線は電磁波です。電磁波とは電場と磁場が交互に押し寄せる波です。太陽はガンマ線から電波に至るまであらゆる波長の電磁波を放射しています。その中で0.75~1000マイクロメーター(μm)の波長領域が赤外線と呼ばれます。更にその中で4~1000μmの波長領域が遠赤外線です。この波長を温度に換算すると450℃~-270℃となります。つまり比較的低温の放射体が発する電磁波が遠赤外線なのです。
遠赤外線は熱ではない
遠赤外線は熱ではありません。熱線でもありません。遠赤外線を酸化していないアルミ板に放射してもアルミ板は暖まりません。無機質の物質には吸収されずに反射してしまうからです。有機質の物質には吸収され分子運動を活発化させることにより、暖めることが出来ます。熱の伝わる方法には熱伝導・対流・放射の3種類がありますが、遠赤外線を伝えるのは放射伝達だけです。熱は物質の表面を暖め遠赤外線は物質の内部を暖めるという違いがあります。
赤外線(赤外放射)の定義
文献「実用遠赤外線」によれば、赤外線(赤外放射)の定義は「赤色光0.74μm~波長1000μm(1mm)までの領域に相当する電磁波」である。ここでは赤色光より波長の長い波長領域から1mmまでの電磁波を指している。ただし、波長域の区分は、学会や業界毎に更に細分化されていてまちまちであるので注意が必要である。
遠赤外線用語JIS原案
「遠赤外線」「赤外線放射」
物質などに吸収されると、他の様態のエネルギーに変換されることなく、直接的に分子や原子の振動エネルギーや回転エネルギーに変換される波長域の赤外線放射。
注記:用語の併記は、JIS化分科会でも統一できなかったことによる(平成6~7年通産省の委託による「遠赤外線用語の標準化のための原案作成委員会」での答申)。また、波長域の下限についても数値を定義せず、下記の記述にとどまった。「学会、協会により3、4もしくは5μmのいずれかが下限値として決められている」
JIS原案以外の遠赤外線(波長域区分方法)の定義を以下に示す。
・IEC 60050-841(1983-01)International Electrical Vocabulary. Industrial Electroheating/4μm~1mmまで
・日本エレクトロヒートセンター/3μm~1mmまで
・遠赤外線協会/3μm~1mmまで
資料:日本ヒーター株式会社のホームページより引用
人間から放射されている電磁波(遠赤外線)と同じ波長の電磁波を与えれば、人間は温かく感じます。熱の放射と吸収は同じという原理があるのです。 人体は、3分の2が水です。その水は4μm前後の電磁波に反応し温められます。でんぷん質や糖分は4μm~7μm、油脂分が12μm~13μmということなので、大まかに4μm~16μmの波長を出す発熱機があれば暖房ができるのです。
食品に電磁波を用いて加熱するのも同じ原理です。産業分野で主に利用される波長域は、2.5μm~25μmの範囲です。問題は、表面を灼くのか全体を温めるのか、人体の暖房と料理の違いはありますね。
地球という物体から放射されている電磁波もほぼ人間から発せられているものと同じです。むしろ、地球環境の中で発生した生命の根本的な原理といえます。