エコハウスは、高気密・高断熱・高遮熱・高調湿・高通気・高遮音・高耐久・高耐震・抗菌化の9Kで造る。 | |
高気密を保ちながら、家の壁と屋根の構造に通気性を持たせ、室内を常に新鮮な空気で満たす。 | |
高通気を保ちながら家全体をアルミ箔で包み、エアコンは使わずに、風の出ない輻射式の冷暖房を使う。 |
日本の木造住宅の長い歴史の中で、高気密で高断熱の工法が多く採用されるようになったのは、21世紀に入ってからのことです。高気密と高断熱には相乗効果があります。気密性を高めることで、断熱機能の低下を防ぐことができ、断熱性を高めることで室内の空気が逃げにくくなります。高気密・高断熱を同時に取り入れる住宅が増えているのはこのためです。
高気密と高断熱だけでは不十分で、エコハウスは、さらに高遮熱・高調湿・高通気という、技術的には難しい課題をクリアして作ります。
高気密と高通気は、相反することです。高断熱と高調湿も、相反することです。遮熱という考えは、現代の住宅にはありません。ですから、いままで、一般的に使ってきた建材だけを使って、エコハウスを造ることはできないのです。
それでは、どうすればいいのか、答えを導いてくれたのが、古人の知恵からできあがった古民家です。古民家は、日本の暑い夏を少しでも快適に過ごすために考えられて造られていますので、高調湿と高通気の能力を持っています。しかし、冬場は隙間風があって、寒いのです。寒さをしのぐために、囲炉裏で火を焚き、輻射熱で体を温めてきました。当然のことながら、シックハウスになる人は、いなかったのです。
この古民家のいいところを学び、取り入れ、知恵をしぼりました。そして、夏は暑くなく、冬は寒くない、現代のエコハウスを造ることができるようになりました。今までに馴染みのない建材を使いますから、いわゆる普通の工務店は、消極的です。大工さんも嫌がるでしょう。
建て主の方からこの取り組みを促してください。
高気密・高断熱の住宅は、確かに冷暖房の効きがいいので、エネルギーのロスが少なく、冷暖房費が安く済むのでエコのように感じますが、それは違います。気密性が高すぎるのです。気密性が高すぎることでさまざまな問題が発生します。
問題① | 家の中の空気の二酸化炭素濃度が直ぐに高くなる。二酸化炭素濃度が高い部屋で寝ると、朝起きた時に、頭痛がしたり、熟睡できず、たくさん寝たはずなのに眠い、だるい、頭がボーっとする、などの症状がでます。いわゆる酸欠です。 |
問題② | ホルムアルデヒドなどの化学物質が、家の中から抜けずらいので、シックハウスやアトピーといったアレルギーを起こす人が増えるのです。家具には、ホルムアルデヒドなどの化学物質の制限がありませんので、安価な家具を購入するとホルムアルデヒドなどの化学物質が、家の中で発生し続けます。 |
問題③ | 壁の中で、結露が発生するので、カビが発生する。さらには、木材を腐らせる腐朽菌が発生し、柱や梁などのといった構造体を腐らせてしまう。 |
問題④ | 夏場、高気密・高断熱住宅のでは、2階が暑くなる。階段で2階に上がるとムンとする暑い感覚を覚えたことがある方は多いと思います。 |
問題⑤ | 断熱材が熱を持ってしまうので、夏場は、深夜になっても寝苦しい。 |
ホルムアルデヒドとは、常温では無色透明で、毒性のある気体です。水に溶けやすく、ホルムアルデヒドが40%前後の水溶液は「ホルマリン」と呼ばれていて、生物標本の腐敗を防ぐのに使われています。住宅の壁や天井、フローリングなどの「合板」にも接着剤などとして使用されています。ホルマリン漬けの家を、30年ローンで買い、一生涯かけて返済することになるので、家はよく考えて、良く調べてから建ててください。
毒性のあるホルムアルデヒドが、なぜ接着剤として使われるようになったのは、建材を大量生産しコストダウンの必要があったからです。こんな毒性のある物質が漂う部屋で暮らしていたら、たまったものではありません。次々とアトピーやシックハウスの症状を訴える人たちがでました。2003年の建築基準法の改正で、規制されましたが、24時間換気を行った上で、少ない量であれば問題ないということで、現在でも使われています。
ホルムアルデヒドは、温度が上昇したり、湿度が上がると発散量が増えます。建築基準法の制限内で作った住宅であっても、梅雨時や真夏には、規制値を超えてホルムアルデヒドが発散しているのです。
ホルムアルデヒドの発散に関する建材の基準が、フォースター☆☆☆☆制度です。等級が☆・☆☆・☆☆☆・☆☆☆☆と4等級に分かれています。☆☆☆☆が最もホルムアルデヒドが少なく、いい建材ということになりますが、ホルムアルデヒドは、必ず含まれています。無垢の杉材からは、ホルムアルデヒドが発生しませんので、フォースターの認定が取れないのです。
シックハウスの原因となる化学物質を完全に取り除くことは、現代の社会において非常に困難であると言えます。プラスチック製品は、常にホルムアルデヒドが発散されています。電灯スイッチのプレートや電話やFAXなど、身の廻りには、プラスチック製品があふれています。
そこで優先順位をつけて可能な限り排除する方法を考えます。1996年〜1997年度に財団法人住宅・建築省エネルギー機構が運営した「健康住宅研究会」では、ホルムアルデヒド・トルエン・キシレンの3物質と、可塑剤・木材保存剤(現場施工用)・防蟻剤の3薬剤を、優先取組物質としています。
優先取組物質を含む可能性のある建材・施工材の例
建材・施工材 | 含有している可能性のある優先取組物質 |
合板、パーティクルボード、MDF | ホルムアルデヒド(接着剤) |
断熱材(グラスウール) | ホルムアルデヒド(接着剤) |
複合フローリング | ホルムアルデヒド(接着剤) |
ビニル壁紙 | ホルムアルデヒド(接着剤)、可塑剤 |
防蟻剤(木部処理・土壌処理剤等) | 有機りん系、ピレスロイド系殺虫剤 |
木材保存剤(現場施工用) | 有機りん系、ピレスロイド系殺虫剤 |
油性ペイント | キシレン |
アルキド樹脂塗料 | キシレン |
アクリル樹脂塗料 | キシレン |
油性ニス | トルエン、キシレン |
上記以外の接着剤 | |
壁紙施工用でん粉系接着剤 | ホルムアルデヒド |
木工用接着剤 | 可塑剤 |
クロロプレンゴム系溶剤形接着剤 | トルエン、キシレン |
エポキシ樹脂系接着剤 | キシレン、可塑剤 |
エチレン酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤 | トルエン、キシレン、可塑剤 |
ポリウレタン(溶剤)系接着剤 | トルエン |
可塑剤とは、ある材料に柔軟性を与えたり、加工をしやすくするために添加する物質のこと。 主に、塩化ビニル樹脂(塩ビ)を中心としたプラスチックを軟らかくするために用いられ、そのほとんどが酸とアルコールから合成される化合物。 |
高気密・高断熱の住宅で、シックハウスの蔓延という状態が生まれたため、慌てて始めたのが24時間換気の義務付けです。しかし、これは健康のためにといいながらも、素材や工法は見直さず、力任せの対処法というしかできません。
そこで、重要なことが、壁と屋根の構造に通気性を持たせ、室内で常に発生する化学物質は、常に屋外に排出してしまうことです。機械換気だけに頼るのではなく、機械換気の機能役割を理解し使いこなしながら、家全体がまるで「呼吸する」かのような通気できる構造にします。通気する壁については、エコハウスの造り方・壁のページで詳しく説明しています。
家全体をラッピングシートで被えば、高気密が実現します。この場合、低コストですが、家の通気性がなくなります。料理用のラッピングで顔を包んだ時、気密性が高くなりますが、息ができなくなり窒息してしまうのと同じことです。
高気密を保ちながら、壁と屋根に通気性を持たせるためには、工夫が必要になります。ラッピングシートを使わずに、可変透湿気密シートを使います。室内の気密を保ちながら、湿気を調整してくれるなんとも都合のいい素材でできています。
断熱材は、ウレタンやグラスウールを使わずに、木の繊維が素材となっているウッドファイバーを使います。さらに外壁側は、繰り返しの地震揺れにも耐える構造的な強さと、湿度調整の両方の役割ができるMDFをという構造板を使います。その外側に、湿度の通り抜けができる防水シートを張り、通気層をとります。
結露とは、空気中の水蒸気が、湿度100%の状態になると、水に変化する現象のことです。建物で発生する結露には、表面結露と、内部結露の2種類に分類されます。
一つは、表面結露です。サッシやガラス、玄関ドア、壁、天井などの表面に張り付く結露のことです。表面結露は、目に見えるため、結露が発生したことを確認できます。拭き取らず放置するとカビが発生します。毎朝、拭き取る必要があります。
もう一つは、内部結露です。天井裏、壁の中、床下など、普段目にすることがない建物内部で発生するために、問題は深刻です。結露が発生すると2~3日でカビが発生し、2~3ヶ月で腐朽菌が発生します。
カビは、アレルギー症状ガン・食中毒・真菌感染症などの病気になることが知られています。また、梅雨時や冬期に長い期間、咳が出ます。人体の健康を脅かします。
腐朽菌は、土台・柱・梁などの木材を腐らせます。木材の腐食が進むと、崩壊につながります。つまり、どんなことがあっても、内部結露の発生が発生させてはいけないのです。
木造建築は、本来、長寿命であるはずです。その証拠に、築100年を超える古民家は、日本各地に現存しています。奈良の法隆寺は、1300年を超えた今も健在です。しかし、戦後建てられた住宅は、30~40年で建て替えが必要になります。これは、内部結露が発生してしまった結果、建物が短寿命となってしまっているためです。
夏、暑くて過せないので、クーラーを入れます。クーラーを入れて温度を下げると、反比例して湿度が上がるので、寝苦しい状況の改善とはならないのです。
冬場、室内が乾燥する上に、クーラーを入れて温度を上げると、湿度は下がるので、さらに室内の乾燥が進むのです。
夏 |
温度を下げると湿度が上がる |
夏の東京は気温が35℃を越える猛暑の日が続きます。外気温30℃湿度70%とします。この空気を室内に取り込んで、クーラーを使って温度を下げて26℃に上げたとします。すると湿度は87%になり、高湿度でカビが発生する状態となります。室温を24℃まで下げると結露が始まります。
冬 |
温度を上げると湿度が下がる |
冬の東京で、外気温5℃湿度40%といった状態は珍しくありません。この空気を室内に取り込んで、クーラーを使って温度を上げて20℃に上げたとします。すると湿度は15%になり、カラカラに乾いた過乾燥状態となります。