日本列島は森の国。海に囲まれ、太平洋からの風と大陸からの風がぶつかり合う島。多雨温暖な気候が豊かな大地と豊富な生物相をつくり出してきました。縄文時代以来、日本人は木で建築をつくってきました。それは、身近にあり、多様な性能を利用することができたからでした。また、再生可能な材料でもあったからです。その他に、土壁、石、そして草や竹の利用も合わせて、建築をつくり上げてきました。材料と道具と技術の発展史をそこに見ることができます。
また、日本列島は北から南、そして日本海側と太平洋側とでは気候が大きく異なります。さらには、海側と山側とでもまた異なるのです。その結果、民家はその土地の気候風土に対応して家の形を整えてきました。その土地にふさわしい共生の姿をつくり出してきたのです。
そこから学べることには、限りのない事象に対する建築術があります。一戸一戸の建物だけではなく、集合形態にも深い学びがあります。
さらに、温熱環境としてみた場合に、現代建築が置き忘れてしまった重要な事象があることも確かです。大切なのは、先人の経験してきた「石油やガスを使わない一万年の知恵」を学ぶことです。そこから、現代住宅の未来が見えてくるのではないでしょうか。その視点なしに明日の「エコハウス」を描くことはできないはずです。